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退屈は嫌いか?

「天気の子」を見る前に、新海誠の最高傑作「秒速五センチメートル」を君は見たか?

※ネタバレなんて面白くないことはしたくないので、見たことない人でも安心して読めるように書きました。

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「君の名は」の大ヒットから早3年が過ぎ、今年の夏には新海誠監督の最新作「天気の子」の上映も決定している。同監督らしく、背景の描写がすさまじく綺麗で設定も若干のファンタジーを含めていることから「君の名は」同様の大衆受けしやすい設定を持ってきたのかもしれない。

www.tenkinoko.com

 

 

 

目次です

 

 

 

 

 

秒速五センチメートルとは?

『秒速5センチメートル』(びょうそく5センチメートル)は、日本新海誠による2007年アニメーション映画。配給はコミックス・ウェーブ。『雲のむこう、約束の場所』に続く、新海誠の第3作目の劇場公開作品にあたる。

題意は「花びらが舞い落ちる速度」。新海が監督・原作・脚本・絵コンテ、および演出までを手掛けた劇場作品で、惹かれ合っていた男女の時間距離による変化を「桜花抄」、「コスモナウト」、ならびに「秒速5センチメートル」という短編3話の連作構成で描く。全63分。

アジアパシフィック映画祭最優秀アニメ賞」やイタリア・フューチャーフィルム映画祭「ランチア・プラチナグランプリ」などの映画賞を受賞した。

キャッチコピーは、どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。

 

ja.wikipedia.org

本作の大きな特徴として、新海誠らしくないSF要素やファンタジー要素が一切ないという点、そして同監督の作品の中でも作品全体が物悲しいという点だ。「君の名は」を見た人からすれば、雰囲気が120°くらい違うので、ビックリする方も多いかもしれない。

しかし、新海誠監督が一人で手掛けて最初に世に送り出した「ほしのこえ」は、宇宙に行った少女と地球に残った少年の遠距離恋愛を描いている。そして作品全体もどこか悲しげで、でも繊細な硝子みたいな美しさを放っている。気になる方はチェックしてみてほしい。

ほしのこえ

ほしのこえ

  • 新海誠
  • アニメ
  • ¥200
 

 

 

 

この方の手掛ける作品において「恋愛の距離」というのは大きなキーだ。それに関してはどの作品も共通して言える。この監督は約1時間にわたってSF、ファンタジーありきで様々な形の男女の恋愛を描き続けている。しかも、それは作品全体のメッセージの副次的な要素ではなく恋愛を主軸に物語は展開していく。100%。

監督の作品でも珍しく、「秒速五センチメートル」と、その後に出た「言の葉の庭」という作品だけは、描かれる世界全体は非常にミクロ的で、特段のSFやファンタジー要素も存在しない異色の作品となっている。

 

 

 

 

 

 

ここが美しい秒速五センチメートル

 

①作品全体がオムニバス形式でテンポが良い

この作品では桜花抄、コスモナウト、秒速五センチメートルという3つの話に分けられている。1時間という映画の中では短い時間の中でさらに3つに分けたことにより、場面の転換、時間の変化をつかみやすく全体はテンポよく進んでいく。

それぞれの話でテーマや舞台の雰囲気が大きく様変わりしており、個々の話の中でも恐ろしい速さで時間は過ぎていく。題名になっている秒速五センチメートルという桜の花びらの速度とは打って変わって、作品全体で”季節感”を感じられるほどに早い。

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話は区切られているものの、一気に見ることを強くお勧めする。映画自体が1時間と短めであるし、間が空いてしまうと後半のイメージが変わってしまう可能性があるからだ。それに、一度見始めてしまうとあなたは視聴をやめることができなくなるはずだ。

もし、視聴をやめるならその時は憂鬱すぎて見られなくなってしまった時かもしれない。

 

 

 

②非常に詩的、言葉選びは同監督トップクラス

個人的にこの作品を初めて見たときに一番心に刺さった理由はこれかもしれません。

秒速五センチメートルがほかの作品と圧倒的に違うのは、主人公が語る心理状態や出来事の説明一つ一つが、心にズカズカ刺さってくるというところだ。

 

ただ生活しているだけで悲しみはそこかしこに降り積もるものであります。
洗面所の歯ブラシにも携帯電話の履歴にも通勤電車の場所にも、、、、

 

 このような語りが全編にわたって入ってきます。まるで小説でも読んでいるかのような比喩や擬人法が多く用いられており、それが美しい背景と相まって得も言われぬ一枚絵を次々と視聴者に叩きつけてきます。苦しいと言う気持ちも、幸せという気持ちも、回りくどい比喩表現なのに驚くほどダイレクトに心に残るのです。

アニメ映画のほとんどの主人公語りは状況の説明や時間の変化にとどまっていることが多いが、この作品では人生全体の普遍的な ”やるせなさ”や”愛” みたいなものを分解して新海流に再結合している。

 

 

 

③狭いのにダイナミック

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今作も空は美しく高く大きい

 今作では大きな飛行機に乗ったり、宇宙に行ったり、靴磨きの少年でもありません。どこにでもいる普通のステータスの少年と少女の小さな小さな物語です。

だからこそ普遍的に心に残りやすいのです。主人公の行動に一部感情移入できない人もいると思いますが、どこか自分と重ねてしまう部分もある。そんな話です。

今作では様々な舞台ともに時間が過ぎていきます。主人公は年をとり、人々は成長していきます。わずか1時間の中でこれほどまで時間が過ぎていくのが長く、そして短く感じたことがあるだろうか?

作中では桜が舞い、雪が積もり、暑い夏の海が映り、また季節が秋めいていく…と言う季節のサイクルや状況の転換が苦しいほど残酷に時間の経過をこちら側に感じさせてくるのです。それぞれの背景が鳥瞰で描かれることがあり、ダイナミックな背景とそこに放り込まれた二人の男女と言うコントラストが印象的でした。 

 

 

 

 

 

 

確かに明るくないけどぜひ見て欲しい邦画アニメ映画の傑作 

確かに「君の名は」と比べると笑うシーンは無いに等しいです。ユーモアのあるセリフもほぼありません。しかし、作品全体に流れる雰囲気は他の新海誠作品のみならず、他のアニメ映画にも無い独特なものです。

山崎まさよしさんの『One more time,One more chance』がテーマ曲となっていますが、この曲のMVという皮肉が言われているほど非常にマッチしています。また作中でも同曲のアレンジがいくつも挿入されており、センチメンタルな気持ちにさせますね。

 個人的に洋画を見ることが多い中で、ここまで人にオススメできる邦画はこれだけです。是非是非ご視聴ください。

 

 

 

秒速5センチメートル

秒速5センチメートル

  • 新海誠
  • アニメ
  • ¥2000